パーソナルスペースを確保しつつ
風の通りを邪魔しないつくりに

パーソナルスペースを確保しつつ
風の通りを邪魔しないつくりに

東京都練馬区/マンション/約70㎡

商店街が連なり、遠くにはかすかに踏切の音が聞こえてくる。ノスタルジックな香りを漂わせる東京北西部の穏やかな町。この地で生まれ育ち、家庭を持ってもここから離れたくなかったというSさんは、近隣で時間をかけて中古マンションを探し、運命の出合いを果たします。比較的築浅のこの物件を、間取りから思いっきり変えてフルリノベーション。自分たちの思いをぎっしりと詰めこんだ家づくりに挑戦しました。

家族構成:夫婦(30代)+子ども1人
築年数:21年(購入時)
主なリノベーション:フルリノベーション
打ち合わせ期間:約3.5カ月 工期:約3カ月

「独立」と「開放」の両立を叶えた“隠し五枚引き戸”

Co-DESIGN OFFICEに依頼したきっかけを教えてください。

Sさん:不動産会社さんに4つの施工会社さんを紹介されたのですが、好みがばっちり合ったCo-DESIGN OFFICEさんにお願いすることにしました。細部にまでこだわりを感じて、グッときたんです。

実際、お願いして本当に良かったと思っています。こちらが出した希望に対し、NGを出されたことはなく、物理的にできない部分や予算超過しそうなところは、別案を提案してくださって本当に驚きました。無理難題を言ったつもりだったのですが……。

フルリノベーションをすると決めてから、夫婦ですごくワクワクしてしまって。通勤の行き帰りの電車の中でまで、いろんな事例をネット検索しながら「Goodnotes(iPadのメモアプリ)」に理想の間取りをいくつも描き、細かな部分までやりたいことを書き込んでいました(笑)。それを全部、肯定的に受け入れてくださったのがうれしかったですね。

リノベーションをするにあたって、大事にしていたことや絶対に譲れなかったポイントはありましたか?

Sさん:リモートワークが増えたので、書斎がほしかったというのは第一にありました。同時に書斎のようなパーソナルスペースがありつつも、開放感がある家に、という矛盾した希望もありました。

それらの矛盾を叶えたのが、この部屋の一番のポイントである「五枚引き戸」なんですね。

Sさん:そうですね。この五枚の引き戸を使うことで、書斎の独立性とリビングや畳の小上がりとの連動性が叶いました。

部屋の中心部に、五枚の引き戸を造作して仕込み、仕事をするときは書斎の扉を閉め、畳の小上がりにこもりたいときは、和室の扉だけを閉め、家族団らんの時間にはすべての扉を開けて開放的に、と使い分けができるようにした。

Sさん:他にも、子どもが夜すぐに起きてしまうタイプで、今までの家は寝室にクローゼットがあったため、ものを取りにいくと、子どもがすぐに目を覚ましてしまっていたんです。「せっかく寝たから、ものを取りにいくのは我慢しよう」ということが多くて、それがものすごくストレスでした。なので、寝室は寝室、クローゼットはクローゼットとスペースごとに目的を一致させたいというのもあり、そこはウォークスルークローゼットを作ることで解消させました。

朝起きて、子どもを起こさずに寝室からそのままウォークスルークローゼットに移動して着替えができますし、玄関側の入り口はランドリールームから近いので、洗い終わった洗濯物を運びやすくなるなど、快適な生活動線も確保できました。

畳の小上がりは、収納&防音と良いことづくめ

今回リノベーションした部分で一番のお気に入りの場所はどこですか?

Sさん:1つにしぼれないのですが……。特に気に入っているのは、仕事場と同じ仕様のL字型デスクを配置した書斎と、畳の小上がりですね。

小上がりの畳の下は全部収納になっていて、子どものオムツなどかさばるものを収納するのにぴったりなんです。

もともとこの和室は、子どもが自由に遊んで動けるスペースにしたいと考えていたのですが、小上がりにすることで、下の階に足音が響きにくくなったのは思わぬ収穫でした。また、キッチンで料理をしているときに、子どもの様子が自然と視界に入るというメリットもあるんです。

このマンションは、もともと天井が高めに作られていたので、小上がりを作っても圧迫感なく快適に過ごせています。

書斎と畳の小上がりは、収納棚で仕切られている。

そのほかこだわったポイントはありますか?

Sさん:夫婦の間で、子ども部屋をどうするかという点はよく話し合いました。でも、使うようになるのはまだ先だし、そんなに優先順位は高くなくていいという判断に落ち着きました。2人とも読書が好きなので、ライブラリーを作るなどして大人の時間も大切にした空間づくりにしました。

 ほかにも細かなポイントはたくさんあって。例えばキッチンはダークな色で締めたのですが、リビングにつながっているキッチン収納の横の壁だけは、明るいホワイトカラーにして、リビング全体のバランスが崩れないようにしたり、キッチンカウンターは高さを作って、リビング側から手元が見えないようにしたり。これらは、すべてCo-DESIGN OFFICEさんの提案でした。
 キッチンといえば、コンロもこだわって3つ横並びのものを選びました。魚焼きグリルを犠牲にしていますが、もともと魚焼きグリルは使っていなかったので、いらないと判断しました。手前が空いた分、そこで調理ができますし、鍋やフライパンの取っ手が手前に飛び出さないので、子どもが近くに来ても安心なんです。

収納を多く作れるのは、新築にはないメリット

暮らし方はどのように変わりましたか?

Sさん:実際に住んでみて、ついにやりたかった暮らしができたと感じています。日々とても生活がしやすく、できればずっと家にいたいくらい居心地がいい空間になりました。

 収納が増えたことで物の置き場所が決まり、きちんと物の管理もできるようになりました。空間に余裕が生まれたおかげでスムーズな動線が確保でき、ようやくロボット掃除機も導入できました。

家で窮屈さを感じずに、仕事ができるのもうれしいですね。

新築だと収納を少なめに設計して、広く見せている物件が多いですし、新築を選んでいたらここまで満足のいく部屋にはできなかったと思っています。結果的に新築より安価で抑えられましたし、今では友達に『新築を買うより、断然中古マンションでフルリノベ』と薦めています(笑)。

素人が現実的な提案ができないのは当たり前

リノベーションをする上で不安だったこと、困ったことはありましたか?

Sさん:あまりなかったのですが……、やりたいことを詰め込んでいったらどんどん予算を超えてしまって。でも、不動産屋さんに紹介してもらったファイナンシャルプランナーの方に相談をして気になっていたことをいろいろと聞けたので、それが不安解消につながりました。結果的に、予算内に収めるよりも理想に近い案を選ぶことが重なって、大幅に予算を超えてしまったのですが、暮らしてみて「どこも削らず、やっておいてよかった」と感じています。

最後に、これからリノベーションしようと思っている人に、アドバイスがあればお願いします。

Sさん:したいことがあれば、なんでも全部言ってみるのがいいと思います。こちらは素人なので、その提案が現実的なものなのかどうかというのは、なかなかわかりません。でも、Co-DESIGN OFFICEさんは、それに対してさらに実用的でおしゃれで、きちんと予算も考えられたご提案をしてくださいました。

収納の仕方の相談にも乗ってくださいますし、細かな部分ではリビングの照明も、海外のものなんですけど、Co-DESIGN OFFICEさんが探して手配してくださったんです。「テレビで見たこれがいい!」と、画像を見せただけなんですけどね(笑)。

毎日の暮らしに関わることなので妥協せずに、納得いくまで突き詰めたほうがいいと思います。Co-DESIGN OFFICEさんなら、きっと相談に乗ってくれますよ。

取材・文/磯部麻衣  写真/影山優樹