素材感にこだわった 知的な大人の住まい
素材感にこだわった
知的な大人の住まい
東京都目黒区/マンション/約45㎡
都心部にありつつ近隣には大きな公園を配し、自然を感じ取れる街。そんな街を見下ろす中古マンションの一室を部分リノベーションしたSさんに、理想の住まいを形にした経緯を聞きました。Sさんが経験してきた海外暮らしのセンスを活かした施工事例をお届けします。
家族構成:一人暮らし(30代)
築年数:15年(購入時)
主なリノベーション:部分リノベーション
打ち合わせ期間:約2カ月 工期:約2カ月
海外の家のキッチンを再現したい
この土地に中古マンションを購入したきっかけは?
Sさん:昨年まで4年ほどアメリカに赴任していて、日本に戻るタイミングで家を購入することに決めました。こちらのマンションに決めたのは、周りの環境がよかったからです。
ランニングが趣味なのですが、緑も多くて走っていて気持ちよさそうだなと思ったんです。ニューヨークにいた頃は、セントラルパークやブルックリンのプロスペクト・パークを走っていたので、できるだけ近い環境がいいなと思っていました。
築15年のマンションと比較的新しく、リノベーションの必要もなさそうでしたが、なぜリノベーションをしようと思ったのですか?
Sさん:購入にあたって、「絶対にリノベーションをしたい」という希望があったわけではなかったのですが、特にキッチンは、自分の好みを反映したデザインや仕様にできればと考えていました。
ニューヨークの家のキッチンは、すごくしっかりしていて、さらに人を呼んでホームパーティーをする文化があったので、そんな生活を再現したいと思ってリノベーションをすることにしました。

他はどこをリノベーションしたのですか?
Sさん:他は、寝室の壁を移動させてリビングを広く使えるようにし、トイレや洗面台のミラーや部分的に照明も新しく交換してもらいました。
あとは玄関周りの収納にニッチを作ってもらって、アートを飾るスペースを設けてもらいました。全体的に左官壁に塗り替えてもらったので、作品もよく映えるようになったと思います。
左官壁は、Co-DESIGN OFFICEさんから提案していただいたのですが、やってみて本当によかったと思っています。左官の手触りや光が映える美しさなど、素材感を大事にしている私の好みをご理解いただいたうえでの提案だったんだろうな、と思います。

これまで住んできた家の雰囲気に近づけたい
全体的にどんなイメージの家にしたいと思っていたのですか?
Sさん:前の家のキッチンがこのような木の色合いだったのと、実家も木がふんだんに使われている家だったので、木の素材感は大事にしたいと思っていました。それらの家や近いイメージの画像を探してきて、初期段階でCo-DESIGN OFFICEさんにお見せしました。
あとは、建築家のジェフリー・バワ(※)が好きなので、彼が作ったホテルも参考にしたいとお伝えしました。

(※)スリランカを代表する建築家。西洋のモダニズムと熱帯の風土を融合させた「トロピカル・モダニズム」の第一人者
Co-DESIGN OFFICEに依頼した理由を教えてください。
Sさん:リノベーションをするにあたって、不動産屋さんからいくつかリノベーション会社を紹介していただきました。その中の一つにあったCo-DESIGN OFFICEさんの事例を見ていると「デザインに結構幅があるな」と感じ、提案が一直線でないんだろうなという印象を受けたんです。
そこで初めてオフィスを訪れたんですが、やわらかい雰囲気の2人のユニットが面白いなと思って、ここにお願いしようと決めました。斎藤さんと藤澤さん2人のやりとりや絶妙な掛け合いが、見ているとすごく面白いんですよ(笑)。
リノベーションをするにあたって、不安や迷いはありませんでしたか?
Sさん:基本的に選択肢を提示いただければ決断できるので、そういった場面では複数ご提案をいただけたので、選びやすかったですね。あとは、藤澤さんが実利的な部分にお詳しいので、デザイン性だけでなく暮らしやすさまでを含めた提案をしてくださったのはありがたかったです。
例えば、ホームパーティーをしたいならキッチンは壁付けにせずに、人が回遊できるようにアイランド型にしたほうがいいという視点は、自分一人では思いつきませんでした。
とはいえ、実利的な面に寄りすぎない絶妙な落とし所を探ってくださるのもうれしかったですね。
キッチンの床は使いやすい塩ビタイルだとコストダウンできるのですが、私が納得していないのを察知されて、ヘリンボーン柄で組んだフローリングを提示してくださったり、床の見切りに真鍮を入れてくださったり、細かなところまで一緒にこだわってくださいました。フローリングでもウレタン塗装されているので、水回りに置いても問題ないそうで、デザイン性と実利の両輪をかなえたご提案だったと思います。

どこを見ても美しいものが目に入ってくる空間
今回リノベーションした部分で一番のお気に入りの場所はどこですか?
Sさん:やはりキッチンですね。キッチンは、CUCINA(クチーナ)で造作してもらいました。木をメインにしつつ天板を黒にして、前の家のキッチンと同じ配色にしました。もともとこの家にメインに使われていた茶色の突板壁が好きで、それに合わせてキッチン収納は特注で色を塗ってもらい、壁面に収納棚も作ってもらったりしました。
あとは照明にもこだわっています。換気扇の上の照明って基本は白色の電灯しかないのですが、それがどうしても気になってしまい、暖色系のものにしてもらいました。
オーブンもCUCINAのショールームで出合ったSMEG(スメッグ)にしました。扉にしっかり重さがあり操作性がよく、重厚感あるデザイン性に惹かれたんです。ただ、取り寄せに時間がかかってしまい、オーブンだけ竣工の3カ月後に別途設置してもらいました。
実際に暮らしてみて、住み心地などはいかがですか?
Sさん:心に余裕ができた感じがします。見晴らしもいいですし、ゆったり暮らしていけている感じです。休みの日は、だいたい家で過ごしています。ランニングして、スーパーに寄って帰ってきて料理をしたり、夕方からお酒を飲みながら本を読んだり……と、すごく居心地がいいですね。
大きな家ではないので、見渡すと全てが視界に入ります。そんなときに「どこを見ても美しいものがある」ということは大事なことだと改めて実感しました。一つひとつ納得のいくものを選んでいったので予算はオーバーしてしまいましたが、それでもやっぱりその選択は間違っていなかったなと思っています。

取材・文/磯部麻衣 写真/菊池貴裕、影山優樹