限られた空間にあえてつくった「余白」
日々の心の拠り所に
限られた空間にあえてつくった「余白」
日々の心の拠り所に

東京都品川区/マンション/約62㎡
東京湾ウォーターフロントを望める大規模マンションの一室をリノベーションしたWさんご一家。当初は、新築戸建てへの夢がありましたが、予算の壁にぶつかり中古マンションをリノベーションすることに。結果、今はその選択が大正解だったと感じていると言います。理想の家をつくるにあたって工夫したポイントや暮らしの変化など、話を聞きました。
家族構成:夫婦(50代)+子ども1人
築年数:18年(購入時)
主なリノベーション:フルリノベーション
打ち合わせ期間:約2カ月 工期:約3.5カ月
タワマンのメリットを活かしたリノベーション
マンション購入時点では、築年数18年と比較的新しくきれいな部屋だったと思います。なぜフルリノベーションされたのですか?
Wさん:もともとこのエリアに住んでいたのですが、以前の家は電車の騒音が気になるところで、いつか住み替えをと考えていました。
できれば同じエリアで戸建てを一から建ててみたいと思っていて、いくつものハウスメーカーを回って見積もりを取っていたのですが、予算を大幅に超えてしまうものしかなくて。このエリアに住むことを優先して中古マンションのリノベーションに舵を切りました。自分たちの好きなように作りたかったので、築年数に関わらずリノベーションは前提条件としてありました。

目指したのは、ホテルライクな住まい。すっきりとした空間は、掃除もしやすい。効率的な家事動線も考慮して設計した。
中古マンションのリノベーションという選択をしてみていかがでしたか?
Wさん:住んでみたら、戸建だったら手に入れられなかったメリットがたくさんあることに気づきました。
まずは、大きな公園に隣接しているのでベランダからの眺めが良いこと。夜は、夜景が綺麗ですし、年に2回行われる花火大会も家から鑑賞できるんです。
そして総戸数500を超える大規模マンションなので、共用施設が充実していること。例えば、共用のゲストルームがあるので、家族や親戚が泊まりにきた時はそこに泊まってもらうので客間も客用布団も必要ないですし、布団を干したりシーツを洗ったりという手間もありません。
それにゲストルームのお風呂は、ガラス張りでとても素敵なんです。掃除も必要ないですし、娘がお友達を呼んでお泊まり会をすることも。
パーティールームもあるので、PTAの集まりで、どうしても作業場が見つからなかった時に利用させてもらったこともあります。こんなに充実していますが、戸数が多いので共益費も修繕積立金も比較的リーズナブルなんです。
あと想定外だったのが、夏は涼しく、冬は暖かかったこと。マンションの空調が効いているので、自室ではほとんど冷暖房設備が要らず、実は床暖房を一度も使っていません。電気代がすごく安くなって、毎月5000〜6000円くらいしかかかっていないんです。ストーブなどの余計な冷暖房器具が不要なのもいいですね。

素材から考え抜いた掃除がしやすい家
だからこんなに室内に物がなく、スッキリしているんですね
Wさん:引越しの際に大部分捨てたというのもありますが、部屋の中央に大きなウォークインクローゼットを作り、荷物や服は全部そこに収納できるように工夫もしました。外廊下にもマンション備え付けのストレージがありますし、各階にゴミ捨て場があるので、ゴミ箱要らず。溜めずに毎日すぐに捨てられるのもいいですね。
以前住んでいた家が76㎡あったので、そこに比べると狭くなったのですが、共用施設を活用しつつ、間取りを工夫したらとても開放的な空間ができました。
理想としていた「ホテルライクで掃除がしやすい家」が手に入って、とても満足しています。
掃除がしやすい開放的な空間をつくるために、他にどんな工夫をしましたか?
Wさん:広くスッキリ見せたかったので、扉は引き戸にして必要なときだけ仕切れるようにし、全体的に色はモノトーンでまとめ、素材感も統一しました。
Co-DESIGN OFFICEさんに掃除のしやすい素材を教えていただき、床材は、拭き掃除がしやすい表面素材のフローリングにして、髪の毛が落ちても目立たない色にしました。
あとは床に物を置かずに済むように本棚や靴箱も造作してもらいました。埋め込んであるので、地震が来ても倒れることがなく、安心です。
今回リノベーションした部分で一番のお気に入りの場所はどこですか?
Wさん:明るくて広い玄関です。靴の着脱や宅配の荷物の受け取りなどもスムーズにできますし、濡れた傘を広げて乾かすこともできる広さがあります。
限られた面積のなかで玄関にあえて余白をつくったことは、精神面にもとてもいい影響を与えてくれています。帰宅して扉を開けると、気分がすっと軽くなるんです。
戸建を建てていたら、貧相な感じにしかならなかったと思いますが、同じ予算で大規模マンションをリノベーションにしたら、リッチな雰囲気につくり上げることができました。人を呼ぶと、いつも「わあ〜、広い! 素敵!」って言ってもらえて、うれしいですね。

“大先生”に頼むより、安心できる人に託したい
Co-DESIGN OFFICEに依頼したきっかけを教えてください。
Wさん:納得のいくものにしたかったので、事前準備や情報収集はしっかりと行いました。その中で見つけた13社の施工会社に話を聞き、最終的に3社に絞って見積りを取りました。
どの会社さんも魅力的なプレゼンをしてくださいました。でも、「うちは、設計のあの大先生に頼めます!」などすごく素敵な、でもすごく高級そうな家をイメージで見せてくれるところもあり、「これ、本当に予算内に収まるのかな……」と不安になりました。「収まります」とはおっしゃるんですが、なかなか不安は拭えなくて。
そんな中Co-DESIGN OFFICEさんだけが一番細かく、具体的な金額や期間、現実的な提案をしてくださいました。「頼むことがなければ、この提案にかけた労力はすべて無駄になるのに……」と、その丁寧さに驚いたものです。ここなら予算のブレも少ないだろうと、お願いすることにしました。
実際、予算内に収まりましたか?
Wさん:はい、しっかり。最後に追加で家具や時計、植物などを見繕ってもらって配置してもらった分は、予算から出てしまいましたが、本当に少しですね。
暮らし方はどのように変わりましたか?
Wさん:キッチン一体型のLDKにしたことで、家族が顔を合わせる時間が増えました。片付けもしやすくなったので、整理整頓も習慣に。また、とても静かなので、よく眠れるようになりました。空間を変えただけで、時間の使い方や価値観まで整ったような気がしています
今後、この家とどのように付き合っていきたいですか?
Wさん:常に「余地を残した暮らし」を理想としています。今後、子育て、介護、在宅ワークへの変更など、予期せぬことも起こると思いますが、そんな変化に対応できるようにしておきたい。いつか売却することもあるかもしれないので、そのために資産価値も意識して購入、リノベーションも行いました。
でも、今は毎日「ここにしてよかった」と心から思える瞬間を味わっています。長く心地よく住み続けるためにも日々メンテナンスも意識しながら、余白のある空間で、自然体で暮らしていきたいと思っています。

取材・文/磯部麻衣 写真/黒坂明美 影山優樹