緑と光が交差する場所
くつろぎを求めた聖域づくり

緑と光が交差する場所
くつろぎを求めた聖域づくり

東京都大田区/マンション/50㎡

賑やかな都心部で賃貸暮らしをしていたというKさんが安住の地に選んだのは、短距離路線が走る生活感のある町。都心部にもアクセスが良く、商店街もあるこの町で癒やし空間づくりに挑みました。日々ハードワークをこなすKさんにとって、まさに聖域とも呼べる場所。完成までの軌跡を辿ります。

家族構成:一人暮らし(40代)
築年数:37年(購入時)
主なリノベーション:フルリノベーション
打ち合わせ期間:約2カ月 工期:約3カ月

心の安寧を求めて家づくり

中古マンションを購入して、リノベーションしようと思った経緯を教えてください。

Kさん:それまでは都心部の賃貸物件で暮らしていたのですが、もう少し広めのところでゆったりとした暮らしがしたいと思い、中古物件を探し始めました。

仕事がとてもハードで、特にここ数年はますます過酷な状況となり、残業の上限時間が超えてしまうこともザラ。仕事場と家を往復するだけの毎日だったので、休みの日くらい家でゆっくり過ごしたいと思ったんです。

また、ローンなどのことを考えても年齢的に家を買える最後のチャンスかなとも思っていました。

Co-DESIGN OFFICEに依頼したきっかけを教えてください。

Kさん:不動産会社さんから3社ほど紹介いただいたのですが、プレセン内容が気に入ったのはもちろんのこと、Co-DESIGN OFFICEさんのロゴを見て、ビビッとくるものがあり……。

テイストも好きだったのですが、「洗練されているな、そういうのもロゴに現れるんだろうなあ」と思い、その場で即決しました。

リノベーションをするにあたって、大事にしていたことや譲れなかったポイントを教えてください。

Kさん:とにかくくつろげる家にしたかったんです。幸せホルモンであるセロトニンがたくさん出るような(笑)。

植物をたくさん置きたかったので、まずは植物が育てやすいつくりにしたいと思っていました。土間の近くに洗面を配置し、洗面シンクはたくさんの植物をつけ置きできるように大きなものに。

そして家の真ん中にお風呂を置き、玄関から土間までぐるりと回れるような回遊動線が憧れだったので、お伝えして設計して頂きました。

全体的なデザインは、グリーンに木材とコンクリートやメタルをミックスさせたイメージでお願いしました。

幸せホルモンと呼ばれる「セロトニンがたくさん出る家」をテーマに改修

出勤時に癒やしのひとときをくれる至高の場所

特にお気に入りの場所はありますか?

Kさん:特に気に入っているのは、玄関と土間の間のガラスの壁です。出勤時にふと横を見ると大好きな洗面所と朝日に照らされた植物が目に入って、そのひとときがすごく素敵なんです。おかげで毎日気持ちよく出勤できています。

実は、Co-DESIGN OFFICEさんには「お二人のやりたいことを一つ残して欲しい」と、要望していました。私はリノベーションに関しては全くの素人。プロのお二人が「いいと思うもの」を取り入れて欲しかったんです。

それがこのガラスの壁でした。本来は360°回遊できる家を目指していて、玄関と土間をつなげるつもりだったのですが、玄関からの冷気が入ってきて部屋全体が寒くなるということで、格子のデザインが美しいガラスの壁が入ることになりました。

玄関と土間を仕切るガラスの壁。ガラスにすることで抜け感が出て、部屋も広く見える

暮らし方はどのように変わりましたか?

Kさん:コロナ禍が終わって外出する機会も増えましたが、それでも家にいる時間がうんと長くなりましたね。

勤務日は、朝早く出て夜遅く帰ってくるので、家の昼間の表情を見ることができません。休みの日くらいその時間を楽しみたいんです。特に植物は、光の入り具合や季節によってもさまざまな表情を見せてくれます。昼間にしか葉を開かない植物もあるんですよ。

リノベーション前はタバコの煤だらけの部屋だった

施工はスムーズに進みましたか?

Kさん:スピード感ある進め方で、思ったより早くできるんだなという印象でした。毎回すごくわかりやすく説明してくださって、「次はこれを決めるので考えておいてください」と宿題を出してくださるので、よく考えてから次の打ち合わせに向かうことができました。

リノベーションをする上で不安だったこと、困難だったことはありましたか?

Kさん:以前住んでいた方がヘビースモーカーだったようで、物件購入時点では、壁紙がくすんで黄色くなっていて匂いもかなり残った状態でした。

この匂いが完全に取れるのかなという不安もありましたし、壁紙の色のせいか引き渡し時にはずいぶん暗い部屋に見えたんです。

植物を置くにあたって、十分光が差し込む部屋にしたかったので、不安が残るままお願いしました。でも、Co-DESIGN OFFICEのお二人は、「大丈夫ですよ、がんばります」と安心させてくださり、その要望を見事にかなえてくれました。

また、お二人は本当に“聞きやすい”んです。「こんなこと言ったら恥ずかしいかな」というようなことでもしっかり受け止めてくださるので、気になったことはたくさん質問して、都度不安は解消させていきました。

予算の関係で諦めた塩ビタイルのフローリングはDIY

リノベーションをしてよかったですか?

Kさん:大満足です。自分で選んで決めたものに囲まれて暮らせるって、こんなに満足感があるものなんですね。Co-DESIGN OFFICEさんに頼めたことも、本当によかったです。

住んだ後のことをしっかり考えて設計してくださったので、毎日暮らしやすさを実感しています。

例えば、ベッドスペースとキッチンの間の壁も、本来は腰壁だけをイメージしていたのですが、強度の面でフレーム状にした方がいいとご提案いただきました。植物を飾れるように、上部には引っ掛けられる枠まで付けてくださいました。

ゾーニングしつつ明るくしたいという希望をかなえ、さらに一歩進んだ提案をしてくださるところは「さすがだな」と感動しました。

さらに驚いたのが、引き渡し直前に、天井に取り付けたポールの高さを変えてくださったこと。

土間に植物を引っ掛けられるポールを取り付けてもらったんですが、現地確認会の際に「想定よりもポールに手が届きにくいですよね。もう少し低くしますか?」と気づいてくださって。最後まで気を配ってくださいました。

ベッドスペースのフレームや土間の天井付ポールには、植物を引っ掛けて飾れるように。フレームにシーツをかけて干せるのも魅力だそう

今後、この家とどのように付き合っていきたいですか?

Kさん:本当はリビングの床を塩ビタイルにしたかったのですが、施工当時は、コロナ禍でさらに戦争の影響もあり、資材が手に入りにくく高騰していたので諦めたんです。そのため床はコストパフォーマンスの良いフローリングにし、1年ぐらい木目の雰囲気や感触を楽しんでから自分で塩ビタイルを購入して貼りました。

これからも自分で手を加えながら、さらに愛着の湧く家に育てていきたいと思っています。次は、リビングの壁の色を塗り替えたいなあと思っています。「何色にしようかな、イエローにしようかな」と、考えているそんな時間も楽しいです。

取材・文/磯部麻衣  写真/影山優樹、菊池貴裕