2度目のリノベーションで見つけた完璧な住まい
2度目のリノベーションで見つけた完璧な住まい

東京都/マンション/部分リノベーション
東京都のとある住宅地の一角。ほどよく賑わい、ほどよく落ち着いたこの街で、新しい暮らしを始めたSさん。築30年という年月を経たマンションの一室をリノベーションし、古さをまったく感じさせない住まいを完成させました。部屋の中心には珍しい色のキッチン、70年代のアメリカを感じるインテリア、すっきりとした水まわり。どこを見てもSさんの「こだわり」と「愛着」が伝わってきます。Sさんにとって、今回は2度目のリノベーション。過去の失敗や後悔を乗り越えて、ようやく「本当に心地よい暮らし」を手に入れました。
家族構成:一人暮らし(30代)
築年数:30年(購入時)
主なリノベーション:キッチン、洗面所、ウォークインクローゼット
打ち合わせ期間:約1.5カ月 工期:約1.5カ月
インダストリアルな部屋を自分色に染め直した
一人暮らしのマンションをリノベーションしたのは2回目だということですが、なぜ二度も経験されることになったのですか?
Sさん:実は以前住んでいたマンションに欠陥が見つかり、退去しなければならなくなったんです。そこも中古マンションを購入してリノベーションしたもので、ある程度満足はしていたのですが、やむなく新たな家を探さなければいけなくなりました。自分らしい部屋をつくることに楽しさを感じていたので、今回も中古マンションをリノベーションすることにしました。

もともとあった建具やデザインを生かしながら、70年代のアメリカを彷彿とさせるインテリアができあがった
なぜこのマンションを選んだのですか?
Sさん:慣れ親しんだ場所に建っていたということと、5年前にリノベーションが行われていてきれいだったこと。そして、元々のインテリアが気に入ったことからです。玄関からリビングにつながるメインの壁に大胆に木が使われていたり、フローリングも天然木だったりと、そのまま生かしたいものがたくさんありました。約60㎡という広さも気に入りました。以前も同じくらいの広さの部屋に住んでいて、物が多い私にとってはこのくらいゆとりがあるほうが心地よく暮らせることがわかっていました。
どの部分をリノベーションされたのですか?
Sさん:主にキッチン収納部と洗面台、ウォークインクローゼット、全体的に扉やドアノブや壁紙など細かなパーツも変えました。

見た目と実用性を備えたルーバー扉とドアノブ
キッチン収納部に使われているグリーンのカラーが、部屋全体の差し色になっていますね。
Sさん: もとのインテリアを生かすにあたり、それに合う色をイメージしてグリーンのキッチンにしたいと思っていました。ヨーロッパ製のメラミン材も候補に挙がっていたのですが、コスト面から国産のものに変更しました。でも結果これにしてよかったと思っています。おしゃれすぎず、少し抜けがあるこのくらいが今の私にはしっくりきています。
あとは、扉のレバーハンドルを握り玉のドアノブに換えたり、ウォークインクローゼットの扉をルーバーのものに換えたりました。クラシカルな握り玉のドアノブは掃除がしやすいですし、ルーバーの扉は見た目がかわいいだけでなく風通しもよくて、収納の扉には最適です。
全体的に70年代っぽい雰囲気というか、ちょっとレトロで、ちょっとポップで。でも全体のトーンは落ち着いている。そんなバランスを目指しました。
リノベーションをするにあたって、大事にしていたことは何ですか?
Sさん:「動線の良さ」と「清潔感」です。例えば、洗面台下の収納は、都度しゃがんで物を取るのがストレスになりそうだったので、観音開きをやめて引き出し型に。サイドには、洗面用具の縦長ボトルがきれいに収納できるように、キッチン下収納にある調味料入れ用の縦長の引き出しをつけてもらいました。これが本当に使いやすいんです。
また、洗面台は掃除のしやすさを優先して、おしゃれな洗面ボウルはあえて選ばず、シンプルなシンク型にしました。以前住んでいた家がボウル型で、掃除がしにくかったんです。何よりも清潔に保てることが、気持ち良く暮らすためには必要だと思いました。

第三者の目線を入れることでバランスが取れた
リノベーションをする上で不安だったこと、困難だったことはありましたか?
Sさん:実は以前のリノベーションでは、工期の遅延やコミュニケーションに不安があったので、今回も遅延などが起こりうるのではないかと思っていました。でも、遅延どころか、予定より早めに引き渡していただけました。
また、前回は、全部自分のやりたいことばかりを詰め込んでしまったため全体バランスがちぐはぐになってしまって、今回はそれを避けたいと思っていました。そこで、迷ったことは、Co-designのお二人に都度相談させてもらうようにしました。打ち合わせでは毎回、使う素材の一覧を資料にまとめて見せてくれたり、全体的なバランスの取り方などもプロの視点で的確にアドバイスしてくれたり、本当に安心して相談できる存在でした。
もともと住まわれていた方のセンスを拝借したのもよかったですね。自分だったら選ばなかったであろう物がたくさんあり、でもそれらを生かした空間づくりはとても新鮮で、存分に楽しめました。自分だけでなく、第三者の目線が入ることで全体の統一が取れたと思っています。
暮らし方はどのように変わりましたか?
Sさん:掃除をするのが楽しくなりました。お気に入りの空間だから自然ときれいに保ちたくなり、生活全体が整ってきた感じがあります。家にいる時間も断然増えました。
2回リノベーションを経験してみていかがでしたか?
Sさん:以前は予算との兼ね合いで、ルーバーの扉を諦めたんです。でも、やっぱりルーバーにしておけばよかったなと、日々後悔していました。収納に風が通らず、湿気や匂いが気になっていたんです。それに毎日目にするものだから、見るたびにうれしくなる空間にするべきでした。
リノベーションには予算も時間も限られてはいますが、「まあ、いいか」で進めてしまうと、住んでからずっと気になってしまうものなんだなと感じました。毎日暮らす場所へのこだわりは、妥協しないことが大事だと思います。
譲りたくないところを妥協しなかった分、キッチン収納をヨーロッパ製のものから日本製に変えたり、トイレ収納の扉をなくしてオープン棚にしたりして抑えられるコストは抑える工夫を重ねました。
それでも結果的に予算を少しオーバーしてしまいましたが、お金をかけた分、暮らしの質も上がって仕事にも前向きになれている気がします。資産としても意味のあることなので、長い目で見ても正解だったと思っています。

取材・文/磯部麻衣 写真/菊池貴裕