ホテルのように使ってほしい
ゲストが時間を忘れて過ごせる家
ホテルのように使ってほしい
ゲストが時間を忘れて過ごせる家

東京都台東区/マンション/約90㎡
飲食店や商業施設、歴史的建造物が立ち並び、古くから栄えてきた賑やかな町。そんな活気あふれる場所に建つ築45年のマンションを購入したSさんは、3つのテーマを軸にフルリノベーションに挑戦しました。狙い通りの家が完成するまでの道のりを、振り返ってもらいます。
家族構成:一人暮らし(50代)
築年数:45年(購入時)
主なリノベーション:フルリノベーション
打ち合わせ期間:約2カ月 工期:約3カ月
あえて「白」を使わなかった
3つのテーマを軸にリノベーションに挑戦したということですが、どのようなテーマだったのですか?
Sさん:まずは、「ホームパーティーができる家」、次に「“家”っぽくない家」、そして「白を使わない家」です。
一番の希望は、人が集える家でした。そして、ゲストが玄関を開けた瞬間に驚きのあるような、まるでホテルやバーのような、生活感とはかけ離れた家にしたかった。最後に、壁などに白を使わないというのがテーマでした。
リノベーションをするにあたって、いろいろと情報収集していたのですが、あるYouTuberさんが「建売の家は、誰にでも合うように白い壁が使われますが、白って本当は緊張色でストレスを感じやすい」とおっしゃっていて、それにすごく影響を受けて(笑)、全体的に黒をベースの家にしました。
エアコンなどの家電も黒で統一し、おかげさまで、目指していたホテルやバーのような空間が出来上がりました。

全体的にモノトーンにまとめた。ラグジュアリーホテルのバーのような大人な空間。
天然の御影石を使ったラグジュアリーなキッチン
一番のお気に入りはどこですか?
Sさん:キッチンです。もともと料理が好きですし、みんなが集える場所としてとてもいい空間ができたと思っています。
アイランド型の中央に火元をおいた「かまど型」にしたのは、料理人を中心に、人が周りを自由に移動できるから。キッチンで、交代で料理をしながら飲むこともあります。「ラグジュアリーなバーのようだ」と、みんな喜んでくれます。
それに一役買っているのが、アイランドの天板と壁に使った御影石。ものすごく値が張りましたけど(笑)、天然の石を使用しました。
最初はセラミックで考えていたんですが、ショウルームで天然の石の天板を見たら、忘れられなくなってしまって。天然にしか出せない模様や触り心地に魅せられました。
壁は鏡面仕上げですが、天板はレザー仕上げにしたので、触ると天然の凹凸感があり、ひんやりしていて気持ちいいんです。「これだけで酒が飲める」と言ってくれる人もいます(笑)。
よく見ると少し茶色が混ざっていたり、ラメのようにきらきらする鉱物が含まれていたり。絵画のように鑑賞して楽しめるのもいいところです。
無駄な空間ができがちな新築より住みやすい
なぜ中古マンションのリノベーションをしようと思ったのですか?
Sさん:一人暮らしの男性で、リノベーションする人ってあまりいないようですね。ネットで探してもあまり事例が出てきませんでした。自分の周りを見てみても、「寝るために帰るだけだから賃貸でいい」という単身男性も多く、あまり家に関心がないようです。
でも、ホームパーティーをするのが好きな僕にとって、家は大事な要素。昔、アメリカに留学していたときに、毎週末のようにホームパーティーが開かれていて、それがとても肌に合っていて、いい経験だったんです。
前に住んでいた大阪の新築のマンションは、決められた間取りのものを購入したので、使いにくい部分がありました。ゲストルームは、物置きと兼用になっていたので、ゲストが来るたびに片付けをしなければいけず、少し住みにくさを感じていました。
そして昨年、東京に転勤が決まった時に、同じ広さの新築マンションを探したのですが、なかなか良いものがなくて。そもそも都心の新築物件数が少ないですよね。
それならば、思い通りにつくれるリノベーションにしようと思ったんです。そして出合ったのがこのマンション。二つのゾーンに分かれている間取りは、とても珍しく、すぐに気に入りました。
右ウイング、左ウイングと呼んでいるのですが、右ウイングは、書斎や寝室、キッチンの実務ゾーン、左ウイングは、ゲストもくつろげるリビングゾーンにしました。
リビングスゾーンでは、ソファや小上がりになっている畳の上でくつろげるようになっています。畳にちゃぶ台を出して、居酒屋風にして飲むこともあります。

クラシックな外観からモダンな室内への“ギャップ萌え”
ゲストの反応はいかがですか?
Sさん:特に大阪の新築マンションに遊びにきてくれていた人は、“ザ・昭和”な外観をみて「え!?どうして?」って驚くようなのですが、部屋に入ったら「うわ!ホテルみたい!」と、目を輝かせてくれます。
来るとみんな長居して、1次会も2次会も3次会もここで行われます。家の周りにはスーパーがたくさんあるので、お酒や食材が足りなければすぐに買いに行けるし、おかげで終電を逃す人も多数(笑)。
もちろん泊まっていってもいいし、そのために小上がりの畳の下の収納には客用布団を収納しています。畳に布団を敷いてロールスクリーンを下ろすと、ゲスト用の寝室に早変わりします。
徒歩1分の場所に銭湯があって、ゲストにはそこで温まってきてもらって旅行気分を味わってもらうこともできます。ホテルのように家を使ってもらえたらいいなと思っています。
実は、家に浴槽はあえて作らず、シャワールームだけにしました。家の前にスポーツジムがあるので、お風呂はほぼ毎日そこで入っています。予算もカットできましたし、風呂掃除の手間も省けたし、この決断は良かったと思っています。

小上がりの下はすべて収納スペース。右側は引き出し型。左側は畳を外すと下に収納スペースが現れる仕様になっている。
一緒に楽しんで、一緒につくってくれた
Co-DESIGN OFFICEに頼んでみて、どうでしたか?
Sさん:たくさんワガママを言わせてもらいました。リノベーションを選んだのだから、妥協せずにとことんワガママを言ってもいいじゃん、と思って(笑)。僕も全部聞き入れてもらえるとは思っているわけではなかったんですが、その予想を超えてお二人も全然妥協してくれないんですよ(笑)。
例えば、壁の色は青がいいといっても「合わないからおすすめしません」と言われたり……。でも、それが正解でした。プロの目線でぶつかってくれたのは、本当にありがたかったですね。
あと、家は不思議な間取りなので、中継機がないとWi-Fiが全室にうまく飛ばないのですが、その設置場所まで相談させてもらいました。代表の斎藤さんの得意分野だそうで、適切な提案をしてくれました。
斎藤さんは、買うべきスピーカーの相談にも乗ってくれました。「今度、僕も見てきますね」とお店にまで調べにいってくれたんです。
御影石を選ぶ時も、「私たちもなかなか行く機会ないので、一緒に石材店まで見にいきましょう」と誘ってくれて、3人で三重県まで遠征したこともあり、本当に社名の通り「一緒に」つくってくれました。
最初から最後まで、お二人が一緒に楽しんでくれていたのがわかり、嬉しかったです。
暮らし方はどう変わりましたか?
Sさん:収納もたっぷりで、掃除がしやすく、無駄のない空間が出来上がって、ストレスが減りました。来てくれた人は、みんな「また来たい」と言ってくれるので、いつ来てもゲストに満足してもらえるよう、きれいさを保ち続けていきたいですね。

取材・文/磯部麻衣 写真/菊池貴裕 影山優樹